名大生の稀覯本日記

月に30~70冊ほど本を読むド暇名大生による、気まぐれな書評ブログです。

「不快」という「快」

 

こんにちは。てながあしながです。

 

突然ですが、皆さんは「不快感」は好きですか?

 

 

 

 

 

1.「不快感」を喜ぶドМ生物たち

 

「不快感」って、みんな嫌いですよね?というか原点に立ち返れば、「不快=みんなイヤだと思う」なはずです。

だから、動物は本能に従って、不快を避けます。火を見れば、怖がって離れていく。犬を川に放り投げれば、水が嫌いだから慌てて陸に上がる。ぼくのおじいちゃんは、よく川に飼い犬を放り投げては喜んでいました。天性のサディズムのなせる技なのでしょうか。

 

閑話休題、動物はみな不快感が嫌いです。しかし、この当たり前の図式に当てはまらない、カッコよく言えばこの二律背反を楽しむことが出来る知的なアホ動物が、この世の中に一匹だけいます。

 

そうです。我々なんです。

 

 

2.新ジャンル、ドン引きエンターテインメント

 

本日ご紹介したいと思っている本は、そんな愚かな我々人類のドМ根性をくすぐる、未曽有のエンターテインメントです。

 

それではご登場願います。こちら!

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『厭な小説』。「いやな」と読みます。

著者は、著書がブ厚すぎて「レンガ本」として揶揄されることでおなじみの京極夏彦氏。

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↑拾い画で恐縮なのですが、ちなみにこちら。文鎮を忘れた際は代用できそうです。

 

 

内容は、「厭な子供」「厭な彼女」など、「厭な」から始まる7つの短編からなる短編集。さらに、どの作品も、書き出しは「厭だ。」から始まります。

 

※ちなみに、「厭な扉」という作品は、「世にも奇妙な物語」で映像化もしています。

↓こちらですね。

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この小説の特徴はずばり、先ほどからずっと言っている「不快感」です。

詳しく説明いたしましょう。

 

 

 

3.あの手この手の「不快」

 

例えば、従来の不快エンターテインメントの代表選手に、「ホラー小説」があります。

しかし、この競合相手と本作の大きな違いは、ズバリ「バリエーションの豊かさ」です。

 

例えば、一作目の「厭な子供」。こちらは、子宝に恵まれない夫婦がストーリーの中心なのですが、いつものように帰宅すると、見知らぬ子供が家の中にいます。

頭がハッピーな私は、「おっ!この子を機にハッピーな展開になるんかな?」なんて思っていましたが、そんなわけありませんでした。

 

まず、その子供は、とんでもなく奇形です。そして、ここからがホラー小説との違いなのですが、そいつは何にもしてこない。ただただ姿を現し、そして消えるだけ。そんなことが頻繁に起きるようになる。それがまた一層不気味なのです。

 

これを機に、主人公の生活は狂っていきます。 ネタバレをしたくないので、これ以上の言及は避けますが、後味も最低クラス。

 

 

まあ本当に、胸糞が悪くなってしょうがないという、極上のエンターテインメントなんです。

 

 

そんな「厭」が、小説ごとに種類が異なっている。エロから汚穢まで何でもありの不快異種格闘技が味わえるのがこの本なのです。

 

 

 

*1

4.メタ的な「不快」

 

おまけに、この本は読者に対して小説の内容以外でも「厭」を与えてきます。

 

先ほどの本書の写真、ご覧いただいた際に、こう思った方、いらっしゃるのではないでしょうか?

 

 

 

「きったない本だな。古本で買ったの載せるなよ」

 

 

 

いえ。これ、新品です。この状態でのご提供なのです。

つまり、表紙が最初っから、黄ばんだ加工がなされているのです。

 

おまけにページを捲ればこちら。

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いや。バカ野郎。

 

もちろんこれもそういうプリントなのですが、ほんとに、虫が苦手な方が読んだら、卒倒してもおかしくない悪ふざけです。今この瞬間にも、BOOK・OFFでこの本を購入した方が店にクレームを入れないか心配でなりません。

 

 

そんな意匠がたまらない、こだわりの一冊なのです。

 

 

 

5.おすすめの方

 

少しパンチのある本を読みたい方にはピッタリでしょう。ちょっと刺激が強すぎるかもしれませんが。

 

 

「後味の悪い本なんて読みたくない!」なんて方は、絶対読まない方がいいでしょう。もう一度だけ言っておきます。絶対に読まないでくださいね。読んじゃっても知りませんからね…

 

なお、この本は文庫でもでているのですが、できたらこのハードカバーで楽しんでいただきたいところです。

 

 

6.まとめ

 

というわけで、めでたいはずの第一回目からものすごい後味の悪いスタートを切ってしました。

 

 

夏、寝る前に冷や汗書いて寝たいなんて方には、一日一話ずつ読んでみるなんて楽しみ方もありそうです。人生史上最悪な夜を過ごす一週間になることでしょう。

 

 

厭な小説 (ノン・ノベル)

厭な小説 (ノン・ノベル)

 

 

*1:最近知り合いの先輩に、「ネタバレしてもいいから、どんな感じなの?」と聞かれたので正直に吐露したところ、ドン引かれました。言わなきゃよかった。