名大生の稀覯本日記

月に30~70冊ほど本を読むド暇名大生による、気まぐれな書評ブログです。

笑って考えさせられる短編 ~パスティーシュのすすめ~

 

 

こんにちは。

最近ずいぶん更新し忘れていました。

 

本日は、「就活時に読んでよかった本」を一旦すっ飛ばして、フツ―に隠れた良本を紹介いたします。

 

 

 

1.はじめに

 

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まずはこちらの文を読んでみてください。

あとで設問が出てくるのですが、ひとまず下線や☐はあまり深く考えずに読んでいってもらって構いません。

 

ニヒエルト・シャフナーはアその窮極のテーゼに等身大の思考を持ち込んで➀センメイな構図を示した。人間は道具の製作及び使用によって自己を自然と結びつけ、それによってひとは敗北主義から独断家になるわけである。a粗密は気質の差によるものである。すなわちその経験に関してA☐を蓄積することができないのは、いうまでもない。リアリズムが客観的、論理的であるとすれば、比喩的表現は直観的で、飛躍的、超論理的、B☐であるように見ることも可能である。神は集団の象徴であり、宗教とは集団の自己②スウハイにほかならないというE・デュルケームの議論はイこのことによって証明されているといってもよいだろう。

 

 

 清水義範「国語入試問題必勝法」(講談社文庫)より抜粋

*1

 

 

 

 

皆さんが大嫌いであったであろう高校の頃の現代文。

こういった文を腐るほど読まされたのではないでしょうか?

飛ばし読みせず、読み切れましたか?

もし読めたなら、この文章が何を言いたいのか、ちょっと考えてみてください。

それでは、一応設問も。ちょっと考えてみてください。

 

 

 

問一 傍線➀~④のかたかなを漢字に改めよ。(原文まま)

問ニ 傍線アの、その、の内容としてふさわしいものを次の中からひとつだけ選べ。

(1)文化が時には自然と対決するという

(2)個人の経験と自己の相違から生まれる

(3)いろいろのことがあるその全体の

(4)夏目漱石の文学における

問三 傍線aの文章と、最も近いものを次の中からひとつだけ選べ。

(1)粗と密は気質というものの差による。

(2)粗は粗であり、密は密であり、それははっきりと別の物であって、そんなことも分からないのは馬鹿だ。

(3)人間の多様性

(4)あたかもトマトとレモンは別のものであるように。

問四 この文章に題目をつけるとすれば、次のうちどれがふさわしいか。

(1)国家と人間

(2)北京の秋

(3)リアリズムの逆襲

(4)続・社長漫遊記

 

 清水義範「国語入試問題必勝法」(講談社文庫)より抜粋

*2

 

 

はい、お疲れ様でした。お付き合い、ありがとうございました。

 

 

 

 

2.ネタばらし

 

 

さて、突然問題を解かせてしまいました。

この文、ずいぶん難しかったですよね。大学生でも読み解くのは困難だったのではないのでしょうか?

人一倍読書をして、ノンフィクション慣れしているぼくもけっこうしんどかったです。

 

おまけに、設問も一筋縄ではいかないみたいです。

漢字はともかく、記号は何を聞かれてるのかイマイチわからない。

 

 

さて、ここでネタばらしです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この文章は、デタラメです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マジか。

 

この絶妙なリアリティ(笑)

 

 

 

 

 

 

 

このことに気付いた人は、いったいどれくらいいたでしょうか。

あなたは、「何を言ってるかわからない、けど読み解かなきゃ‼」なんて思ったのではないのでしょうか!?

はい、私もそうです(笑)

しかし、この文は、テキトーに書かれたのです。

 

 

 

3.モノマネ文学「パスティーシュ

 

さて、もはや前置きが長いことが様式美となりつつありますが、ようやく本日の本のご登場です。

 

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こちら。清水義範氏の「国語入試問題必勝法」です。7つの短編からなる短編集です。

まず、本の紹介をする前に、著者の紹介を。

 

清水義範さんは、愛教大卒の、ゴリゴリの名古屋人。

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パスティーシュ」というジャンルで文壇デビューし、多く作品を残されている作家さんです。

 

パスティーシュ」という言葉にはなじみがないですよね。

文体模写」とか言われますが、もっと広い意味で「パロディ」くらいにとらえておけば大丈夫です。簡単に言えばモノマネみたいなものです。

 

 

 

さて、本作は短編集。そして、冒頭のデタラメ文が載っているのが、この短編集の表題作「国語入試問題必勝法」。

 

 

この短編は、国語が苦手な受験生に家庭教師が国語を教える、という設定。

そこで教えられる必勝法は、とんでもないもの。

例えば、「長短除外の法則」。選択肢の文章のうち、作問者は正解の文を長くさせすぎたり短くさせすぎたりしたくない。そこで、選択肢のうち、長すぎたり短すぎる選択肢は読まなくてもいい、というもの。

他にも、「正論除外の法則」。正論は受験生をひっかけようと思って書いてるから、選んではいけないとのこと。

うーん、むちゃくちゃなんだけど、絶妙にそれっぽい。。。

 

 

 

こんな感じで、「それっぽい文章と問題を使いながら、それっぽい解答術を伝える」という形式をとって、国語入試をパロディしていくのがこの作品。

こうやって書くとものすごくカタくて真面目な作品に見えるかもしれないけど、全然そんなことはなくて、読み物としても面白い。普通に笑えます。

 

 

作者も、教育関連の著書を多く出していたり、教育大学を出ていることから、国語入試

に対しての課題意識があってこの作品を書いたのではないか、と推察されます。そういう意味で、読み物としても面白いし、入試について考えさせられるという点で、この作品は一度で二度おいしいと思います。

 

 

 

*3

 

 

 

4.清水義範イチロータイプ

 

作家さんは、2タイプに分かれる、と個人的に思います。

1つは、作品の質にムラがあり、ものすごく面白い作品もあれば、正直冴えない作品もあるタイプ。野球で言えば、ホームランバッター。

もう1つは、コンスタントに面白い作品を書くタイプ。野球で言えば、バットを短めに持って打席に立つ3割バッター。

 

清水先生は、そういう意味では、後者のタイプなのではないかと思います。

毎度毎度読者の期待を、いい意味で裏切ってくる。

 

だから、この短編集は、表題作以外にも面白い作品があります。

例えば、「靄の中の終章」という作品。これは、ボケたおじいちゃんを主人公として、そのおじいちゃん目線を視座にした作品。

詳しくはここでは言い表せないのですが、読んでいて自分も「あれっ?俺ご飯食べさせてもらったっけ?」というような、ボケ体験ができます(笑)

 

 

そして、本日紹介した「国語入試問題必勝法」以外にも、ヒットを打ち続けている清水先生。またこのブログで紹介したいと思います。

 

 

 

 

5.まとめ

 

というわけで今回は、笑えて考えさせられるステキな短編集「国語入試問題必勝法」を紹介いたしました!

 

次回もこうご期待!

 

 

 

国語入試問題必勝法 (講談社文庫)

国語入試問題必勝法 (講談社文庫)

 

 

 

*1:傍線等は原文のまま

*2:傍線等は原文のまま

*3:なお、この問題は河合塾全統模試に使われたそうです。笑うしかない(笑)