名大生の稀覯本日記

月に30~70冊ほど本を読むド暇名大生による、気まぐれな書評ブログです。

『忖度(そんたく)』って言葉はきっと、広辞苑第七版で意味が追加されると思う。

 

こんにちは、ご無沙汰しております。

ずいぶんと更新をサボっておりました。冒頭より久闊を叙したいと思います。すみませんでした。この一カ月、夏休みをエンジョイしておりました。

その間、一緒にブログを始めた友達が着々と読者を伸ばし、嫉妬の炎に燃えております。

 

 

 

 

閑話休題、ちょっと最近は聞かなくなりましたが、1,2カ月前はしきりに聞いた「忖度(そんたく)」というコトバ。今回はこの言葉をテーマに、本を紹介してみようかと思います。

 

 

 

 

1.そもそも忖度って?

私は、週刊誌なども購読しているので、「忖度」というコトバを、ピークの時は一日に何度も見たのですが、僕の周りには「聞いたことがない」という人や、「どういう意味なのかは分からない」という人がいたので、ちょっとおさらいをしましょう。

 

 

このコトバが注目されたのは、森友学園問題のときですね。

 

忖度の本来の意味は、「他人の気持ちをおしはかること」。だから、そもそもはネガティブな意味はない。むしろ、僕のイメージではわりとポジティブな文脈で使うコトバでした。

しかし、森友学園問題でこの言葉がはやったとき、使われていた文脈はちょっと違った。「上の人の意向を汲む」みたいな意味で使われていたのです。

 

 

 

 

2.意味が増える、ってのはこうやって起こる

 

そして、今や忖度というコトバは、先ほどのような意味がメインとなってしまったようなきらいがあります。

「本来の意味は分からないけど、なんか『悪い意味で空気を読む』みたいな͡͡コトなんでしょ?」

世間の認識は、こんな感じではないでしょうか。

 

 

 

 今回は、「もともと広い意味を持っていたコトバを、頻繁に特定の文脈で使った結果、意味が狭くなる」という経緯で、コトバの意味が変わりました。

 

 

分からないですけど、次回の広辞苑では

 

そんたく【忖度】①他人の気持ちを推し量ること。

        ②(特に、政治などで)上の意向を察したり、汲むこと。

 

 

みたいな風になるのではないか、と予想します。

 

 

 

ちなみに、実は、僕らが普段使っているような言葉も、「忖度」と同じように意味が狭くなっているケースってたくさんあるんです。

 

 

例えば、「評価」だってそう。そもそもは、「物事の価値を吟味し、判断する」といった意味ですよね。

でも、「お前の働きぶり、先生が評価してたぞ」って言われたら、普通喜びますよね。

「えっ、マイナスに評価されたのかな、それともプラスかな?」なんて気にする人はいないはずです。

 

これも、「評価」ってコトバを、プラスの文脈で使い続けた結果、意味が限定されたケースです。

 

 

 

 

逆に、元々意味はニュートラルだったのに、マイナスの意味ばかりがフォーカスされた単語もあります。

例えば「批判」。手元の集英社国語辞典を引いてみても

正しいかどうかの観点から物事や人の意見・行動を評価すること

という意味しか載っていません。

 

でも、「お前のあの判断を、先輩は批判してたよ」と言われたら、普通ショックですよね。

これは、「批判」というコトバが、マイナスの文脈で使われることが多くて、いつしかマイナスの意味を帯びるようになったことから来ているわけです。

「批判」は、マイナスのイメージが強すぎて、「けなす」とか「悪口を言う」みたいな意味だと誤解している人も多いですよね…

 

 

(ちなみに、哲学の話で使われてるときは、ほぼ間違いなく先の辞書的な意味で使われています。

アリストテレスは、師プラトンを徹底的に批判した」なんてあっても、アリストテレスプラトンのことをけちょんけちょんに言ったわけではないですからね‼(笑))

 

 

3.英語だって同じだった

 

すみません、前口上が長くなってしまいました。本の紹介もしていないのに1600字書いてしまいました。レポート書く時にもこんな感じでポンポン進めばいいのに。

 

さて、この「意味が増える現象」は、当然ですが日本語だけではありません。

そうです、我々が受験期に悩まされた英語だって同じなんです。

 

お待たせしました。今回紹介したい本はこちら‼

 

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「英語に強くなる多義語二〇〇」佐久間治著 ちくま新書

 

 

この本は、英語の中でも、特に大事な語200に絞って、多義を持つに至った経緯や、語源を紹介している本です。

 

例えば、先ほど挙げた「忖度現象」と同じことが起きている単語に、succeed があります。

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この単語は、名詞形success(サクセスストーリーの「サクセス」)でおなじみの「成功する」という意味以外にも、「後に続く」という意味もあります。

 

「成功する」と「後に続く」って、全然違う意味…なのに一緒の単語…

 

 

しかし、これも、日本語と理屈は全然変わらないのです。

 

これは、もともと「後に続く」しかなかった。そして、名詞形のsuccessも、「後に続くもの→結果」という意味しかなかったんです。

 

しかし、さっき見た「評価」と同じように、このsuccessはいい意味でばかり使われるようになりました。そうして、「好結果」のような意味になったのです。

 

 

もうお分かりですよね。「好結果を出す=成功する」ということだったのです。

 

 

 

このように、本著は、英語の多義語を、「なんでそんな意味と意味を同時に持つに至ったか」というところにスポットを当てて紹介してくれます。

せっかくなので、もう一個くらい面白いと思ったものを紹介しましょうか。

 

 

「定期」って言いますよね。何を想像しますか?

 

 

 

 

「定期券」の画像検索結果

 

 

これを想像しませんでしたか?しかし、これは「定期券」ですよね?

「定期」ってコトバはもともと

 

一定の期間・周期。 (集英社国語辞典より)

 

という意味しかありません。

でも、「定期券」というコトバが、いつしか「定期」と呼ばれるようになった。「定期」自体には、別の意味しかないのに。

これもまた、あるコトバに意味が増えるポピュラーなパターンの一つです。

 

 

実は、secondもそうなんです。

この単語を習ったとき、「なんで「秒」って意味と「2番目の」って意味があるんだ?」って思いませんでしたか?

これも「定期」と同じ理屈なんです。

 

もともとsecondには、「2番目の」しかありませんでした。

 

むかしむかしは、時間の概念が今ほどせせこましくなかった。その頃の最小単位は、hourでした。しかし、ちょっとさすがにそれでは用が足りなくなってきた。

 

そこで持ち込んできたのが、minuteです。実は、こいつも多義語。

今でも、「マイニュート」のように読むと、「微小な」みたいな意味があるのですが、元々はこの意味しかなかった。この「微小な」で、hourよりも小さい時間を表そうとしたのです。

 

まあちょっとの間はうまくいったのでしょう。でも、もっと忙しくなってくると、もはやminuteでも足りない。そこで作られたのが、’’minuteに次ぐ単位’’でした。

その名もsecond minuteです。もう読めましたか?

 

 

 

 

4.この本との出会いについて

 

はい。というわけで、この本についての紹介は以上です。受験期に、泣く泣く英単語を丸暗記した人は、読んでて目から鱗が落ちるかもしれませんね。

 

 

いつもならこれで終わりなのですが、今回は少し、この本との出会いについて語らせてください。

 

というのも、運命的な出会いをしたのです。

 

 

 

そもそも、この本は多分絶版本。新刊書店に行ってもまず売っていないでしょう。

じゃあ、どうやってこの本に出会ったか。

 

 

 

古本市です。

 

 

例年、10月の土曜日に、円頓寺商店街というところで、BOOKMARK NAGOYAというボランティア団体が古本市を開催します。

 

(拾い画ですが、これが昨年の様子です。商店街沿いに、市内の古本屋や個人が本を売るブースを設けます。)

「ブクマ古本市」の画像検索結果

 

このイベントを、昨年知り、行ってみることに。そこのとあるブースで、この本が売られていたのです。

立ち読みし、この本から端倪すべからざる大物感を感じ、すかさず買って帰った次第です。後は推してはかるべし。

 

古本市自体、人生初のイベントだったのですが、個人的にはこういった絶版の良本と思いがけず出会えるところにものすごい魅力を感じました。

 

そこで、今年も行ってやろうと思ったところ、なんと今年でラストとのこと。

 

これは、と思い、実行委員を志願し、運営する側に回ってみました。

 

 

 

かくいうわけで、最後は宣伝させてください。

 

今年は10月14日(土)にやります。是非、名古屋にお住いの方はお越しくださいませ。

「ブクマ古本市 2017」の画像検索結果

 

あ、ちなみに、古本市だけではありません。本に関するイベントをいろいろやっております。興味のある方はHPもご覧くださいませ。

 

bookmark-ngy.com

 

 

それでは、おあとがよろしいようで。

 

 

↓今回の本に興味を持っても、新刊書店じゃあまず見つからないでしょう。

  Amazonを使ってお求めください。

英語に強くなる多義語200 (ちくま新書)

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